だから結局

So After All

【音楽の感想】『Vanishing Cinderella』

Vanishing Cinderella 先日リリースされたPunch-drunk Loveの新曲『Vanishing Cinderella』を聴いた。 この時期、夜の井の頭公園の醸し出す雰囲気には、冬の終わりがけに特有の色気があるように感じられる。そんな公園散歩をしながら聴いたからかもしれない…

カウントするくせ

無くて七癖という言葉もあるが、私にも癖がある。苦しくなると数を数える癖だ。これは最近気づいたことなのだが、苦しくて余裕がなくなってくると、私は何かしらの回数をカウントする。そしてこの癖は、私特有の癖ではなく、だいたいの人に共通する癖なのだ…

下北沢K2で濱口竜介監督特集上映を見た

先日、下北沢に映画館ができた。 K2というミニシアター系の小綺麗な映画館で、学生の頃によく行った京都シネマの雰囲気を思い出す。 スクリーンはひとつだけというのもシモキタらしい潔さがある。演劇の劇場文化からすると、スクリーンが2つも3つもあるより…

ピンチョン全小説を読んだ感想

映画の感想を書くときにとくに注意しなければならないのは、結末に関わる重大な出来事を映画未見の読者に知らせないようにすることだ。そういった配慮を欠く文章は映画ファンからは評判が悪い。それも単に悪口の対象となるだけでなく、深刻な倫理観の欠如と…

2021年の映画ベストテン

去年ぐらいから映画を見ないといけないという義務感が一切なくなった。 「見るべき」というより「見ておきたい」で映画を見ても、ベストテンから漏れるぐらい面白い映画を見ることができ、不足・不満はない。『偶然と想像』が見れていないので、この後ランク…

【映画の感想】『ラストナイト・イン・ソーホー』

『ラストナイト・イン・ソーホー』を見た。できるだけ予告を見ないようにしているので映画のビジュアルとタイトルから期待して見に行くことを決めていた。タイトルからNYが舞台だと勘違いしていたが、実際はロンドンが舞台で、幽霊が見えるという特別な才能…

別にいいじゃんという気分について

松本大洋を読むといつも心がかき乱されるけど、読んでも何も感じなくなる日が来たりするんだろうか。この度はなんだかそういう日が来そうな気がしてかき乱されているようだから、結局そんなふうになってしまったと感じてかき乱される日も遠からずだろうか。…

【映画の感想】IMAXレーザー(DUNE)

今回はIMAXを視聴するためにDUNEを見に行った。DUNEを見るために映画館に行ったのでもなければ、DUNEを最大限楽しむためにIMAXを選んだのでもない。IMAXレーザーを体験するのに適格だと思って、つまりIMAX浴にとってDUNEはお誂え向きの映画だろうと予想でき…

あの頃のリアリティ

映画『あの頃。』を見て衝撃を受けた。松坂桃李と仲野太賀がアイドルオタクとして活躍する映画だったのだが、名前だけ聞いたことがある程度でよく知らないままNETFLIX上で適当に選び、面白いと思って最後まで見たので、エンドロールの最後に今泉力哉の名前を…

カーシェア時代のドライブ・マイ・カー

カーシェアサービスを使って、夜ドライブするのにハマっていた時期がある。よく知らない車でよく知らない道を適当に走らせるうちに、なんとなく知っている車や、なんとなく知っている道ができた。東京にきて5年経つが、知っている道、知っている場所は順調に…

【劇評】フェイクスピア

フェイクスピア NODA-MAP 第24回公演(2021年) 作・演出:野田秀樹 出演:高橋一生、橋爪功、白石加代子、川平慈英、前田敦子、村岡希美、伊原剛志、野田秀樹 ※物語の結末に触れる箇所があるため、これから見る予定がある人は読まないことを推奨 ■梗概 舞台…

【漫画の感想】奈良へ

twitterのTL上でNHKニュースを見るといつも奈良の感染者数ばかり報じている。 それを見ると、47都道府県あるのだから奈良のことばかり報道していないで、もっと平等に山形とか山口とか和歌山のことも報道してあげてよという気持ちになる。 これは出身地の…

人間は高田純次になれない

我々は何かと高田純次になりたがる。あんなふうに奔放に生きることができたなら――誰しも一度は高田純次の人生に思いを馳せ、その在り様に憧れる。私もそうだった。 いまも高田純次が好きだし、目当てもなくテレビをつけたときに高田純次が映っているとラッキ…

【映画の感想】シン・エヴァンゲリオン

シン・エヴァンゲリオンを見た。初っ端、パリのシーンからグッと引き込まれ、例のテーマ曲がアレンジされてかかるたびごとにしっかりテンションが上がり楽しめた。 なかでも、今回のシン・エヴァンゲリオンで良いと思ったのは綾波レイのそっくりさんが涙を流…

久しぶり日記2

久しぶり日記とは、ご存知久しぶりに書く日記のことである。 mttnysk.hatenablog.com もうすぐ緊急事態宣言期間が終わるとのこと。ただ今回の緊急事態宣言期間も非宣言期間と変わらず、在宅でリモートワークをしたり電車バスを乗り継いで自宅から1時間10分ぐ…

「則天去私」について(文学フリマ東京@エ-32)

私小説作家は、何よりも「私」というものを大事にする。私は私小説作家ではないが、何よりも私を大事にするという点で、そこらの私小説作家に対し決して遅れを取るものではないと自負している。 昔、啓発広告か何かで、利己的でマナーの心に欠ける人間を啓蒙…

遊びについて

遊びについて 幼児の遊びが一線を越えると、幼児は自らの遊びに泣かされることになる。幼児は自ら泣かされることになる方向へ向かう。遊びの領域はその延長線上に危険な領域をもつ。危険な領域がない方向に遊びはない。どの場所にいてもより危険な方向に遊び…

文学フリマに出店します

文学フリマ東京に出店することが決定した。 8月からようやく小説を書こうとしているが、まだ影も形もない。文学フリマ東京は11月22日開催。その日には今存在していない小説が存在していることになるのか。 それはわからないが、とにかく出店することは決定し…

【映画の感想】寝ても覚めても

恋は罪悪ですよ、と言った意味が今ではわかる。 昔は、そんな当たり前のことをいちいち言うのはなぜなのか疑問に思っていた。他人の恋愛観にふれる機会があるごとに、こういった罪悪感と自分の恋愛を無縁に考えている人が想像以上に多いことを知った。悪者に…

【映画の感想】もののけ姫

映画館でジブリを見ようという企画で「風の谷のナウシカ」「千と千尋の神隠し」「もののけ姫」「ゲド戦記」が映画館の大きなスクリーンと高機能な音響設備で見られるというので、4本とも見てきた。 「ゲド戦記」は、世評は高くないものの高校生の頃映画館で…

「同人サークル素人文学」の立ち上げについて

2020年7月9日、同人サークル素人文学を立ち上げました。 概要・活動内容は以下です。 *** ■なにをするサークルか自分が書きたい小説の完成を各々が目指す ■活動方針や頻度生活の中で執筆に当てた時間を共有するscrapboxを使用 ■どんな人に来てほしいか小説を…

サイコパスって

偽名を使うのは、サイコパスの大きな特徴の一つ 『サイコパスの真実』原田隆之 友人からサイコパスといわれたことがある。たぶん冗談なのだと思うが、それがどんな笑いどころをもつ冗談なのかわからないので、そう言われたときの困惑はそれなりにあった。ま…

【映画の感想】ムーンライト

『ムーンライト』、すごくいい映画だった。一人の人物を描写するというスタンスの映画でここまでの映画はない。3章にわかれており、人物の成長にあわせて各時期をそれぞれ別の役者が演じている。最初のシーンからカメラが人物の後ろをついていくように動く…

「書を捨てよ、町へ出よう」について

寺山修司のことが嫌いだが、それはこの言葉に代表される「話を聞いてくれる人に向かって、言わずもがなのことを言って先導しようとする姿勢」がムカつくからだ。書を持っている人は、基本的に読む人であり、人の話を聞く人だ。彼らに向かって呼びかけるのは…

ツイートしようとしたら長くなりすぎた

映画『インヒアレント・ヴァイス』を見て衝撃を受けたのがきっかけで、ピンチョンの本を読むぞと思って少しずつ読み進めていった。『重力の虹』〜『逆光』のあたりでフィクション受容全般に重大な影響を被っているのが自覚されてきたんだけど、あまりにディ…

【本のおすすめ】『息吹』テッド・チャン

最近出たビッグタイトルを読み逃していた。一度は目に入ったのに、なぜか後回しでいいかと考え、即読むということをしなかった。本当になんでなのかわからない。 「自分の愛するものから離れさせるなんて値打ちのあるものは、この世になんにもありゃしない。…

相互理解という甘言に惑わされて

世の中は甘い言葉であふれている。全品20%OFFだとか、一本ご購入でもう一本無料だとか、お金というシビアで辛い数値をマイルドにさせる局面で甘さというのは感じやすいが、シビアで即物的な領域外にも甘い言葉は埋め込まれていて、われわれを行動に誘い出す…

「最高の復讐とは、優雅な生活」とは

メメント・モリ(=死を思え)というのは、他人を特定の観想に引き込むときの常套句である。死は誰にでも平等に訪れることから、ターゲットは広く、ターゲットひとりひとりの注意も引きやすい。恋愛ドラマで主人公か相手役に死すべき運命を担わせるのは、手…

カフカ/臆断/できること・できないこと

先日、カフカの小説を読み終わった。カフカは大学時代に『城』を残して読めるものはすべて読んだ気でいたから、『城』を読み終わったときにカフカを読み終わったと思った。しかし実際には『審判』も読んでおらず、書店で『審判』を探す準備をしているうちに…

朝活が続いている

mttnysk.hatenablog.com なんと朝活が続いている。続いている以上当たり前に続いているのだが、続いていない可能性もあったわけで、それを考えると、なんと朝活が続いているという若干の驚きが混じった表現になる。とはいえ1ヶ月半ぐらいのものだが。 朝活が…