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So After All

【映画の感想】『パラサイト』

作品名:パラサイト 半地下の家族
 
公開日:2019年12月27日
鑑賞日:2020年1月14日
 
見に行ったきっかけ:
TOHOシネマズ新宿のポスター、パルム・ドール関連のネット記事を見て。
 
見る前の予想:
ソン・ガンホが出る韓国映画なんだったらどれだけ期待はずれに終わったとしても一定以上楽しめるだろう。
 
視聴直後の印象:

 
感想(ネタバレなし):
韓国映画だと思った。ラストらへんの若者の描き方などは韓国版ジョーカーといえる。彼は現実を見るときには笑い、妄想を見ているときには真顔になる。ジョーカーよりはだいぶ出来が良いのは間違いないが、出来の良さにおいてはもっと上があると思うし、ジョーカーほどそういうものを要求する客の欲求を満たさないという点で中途半端である。ストレートに狂気を描こうとするほうが、そういうのが好きなゴシップ好きを引き寄せるだろう。
シリアスとコメディが近くにあって度々スイッチする様子はコーエン兄弟を思わせる。金持ちの社長の声が音響効果ばりばりで一人だけ異空間にいる感じがして可笑しかった。絶対に血を出すという韓国映画の制約を引き受けているのは立派だと思うが、もっと笑える血の出し方があるだろうと思う。
しかし、コメディに寄り切らず、かといってシリアス一辺倒にもならない宙吊りの感覚は韓国映画のバリエーションをひとつ増やしたのではないか。中途半端、どっちつかずが一番いいとは言うものの、笑えばいいのか真顔で見ればいいのかわからない絶妙な塩梅で、微妙なバランス感覚を楽しむと言うにはどこか垢抜けておらず、雑に血が流れるし、どう見ていいかわからない。こういう居心地のわるさはジャンルとして成立した(新しいジャンルがすぐ成立する)ハリウッド映画には難しいところなのではないかと思う。ウェルメイドではない(=出来が良くない)というのをチャームポイントにする手管がまだ成熟しきっていないからこそ成立するのかもしれないし、それを韓国映画というジャンル的な見方をされるのを逆手に取って演出しているのかもしれない。いずれにせよ完成度が高いともいえなければ低いともいえないのがこの映画の良さだといえる。こういうよくわからない映画に賞を上げたほうがいいと思うので2019年のカンヌはいい仕事をしたと思う。
 
おすすめ度
映画が好きなんだったら見に行くべき。
 

 

螢・納屋を焼く・その他の短編 (新潮文庫)

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  • 作者:村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1987/09/25
  • メディア: 文庫