だから結局

So After All

【映画の感想】1917

作品名:1917
 
 
公開日:2020年2月14日
鑑賞日:2020年2月14日
 
 
見に行ったきっかけ:予告が面白そうだったので
 
 
見る前の予想:ハラハラしすぎることになってつらいかも
 
 
視聴直後の印象:

 
 
感想(ネタバレあり):
ネタバレに注意する必要がある作品のなかでも、とくに注意するべき部類に入る。ネタバレというと基本的には物語の展開に対して言われることだと思うが、それ以外にもネタバレはあるということがこの映画を見るとはっきりわかる。映画の感想を読んだり聞いたりしてから映画を見ようとする人は自分の選球眼に自信がないのだと思うが、いつまでもそうしていないで監督の名前を覚えたり、好きな俳優を見つけたりなどして、できるだけ最小限の前情報をもとに映画を見るように意識したほうがいい。
たとえば、この映画を見るにあたって、あらかじめ知っていると楽しみが半減することになるいくつかのことがある。この映画の華は中盤までにあると思うが、その理由は「1カメラ、2キャラクター」という引き算が成立するぎりぎりを進んでいくのが中盤までだからだ。それ以降はカメラが追いかけるキャラクターに弾が当たることはなくなるということがワンカット撮影という構成上もはっきりするので緊張感がゼロになってしまう。大きな音でびっくりさせるという意味での緊張感は残るが、敵兵に撃たれても絶対に当たらないと思って安心して見ていられるのは、前半の異様な緊張感との対比で余計にみすぼらしく感じられてしまう。作為的であるのが悪いことだとは思わないが、緊張感のピークを前半に配置するのは全体のバランスを損なっているので演出上のミスに当たるのではないかと思う。ただし、それほど前半のクオリティが高かったということも言え、見るべきところがない映画ではないということははっきりしている。
画面外で何が起こるかわからないという「視界の外にある脅威」を表現するのにキャラクターを二人配する以上の方法はない。どれだけ工夫しても序盤の緊張感に及ばないことから工夫が作為と見なされたりするのは残念だと思う。あっけなく死んでしまう死に方については100点中100点だが、もっと二人での徒歩移動シーンを見ていたかったので、終盤手前まで引っ張ってほしかった。見終わってから全体を見通したらあそこで死なせるのがもっとも理にかなっているとは思うものの、二人での移動シーンを15分なりと増やしてほしかった。
あとはキーパーソンとなる要所の人物に英国のムービースターを配しているのも良くて、彼らを画面上に見つけたときの高揚感が、展開の高揚感を邪魔しない程度に重なって二重写しのようになっているのも映画ならではという感じがした。ゲームに対する映画のアドバンテージは俳優の存在感だと思う。(ゲームにおいて俳優に出演してもらおうとする動きがあるのも当然だ)
森のシーンは現実離れした美しさで神話的な雰囲気が漂っていたが、それでも浮いて見えないのは全シーンを通してつねに現実以上の美しさで画面が作られていたからで、エンドロールにロジャー・ディーキンスの名前を見つけたときは深く納得するとともに、マーク・ストロングコリン・ファースベネディクト・カンバーバッチを発見したときの興奮を足して2で割ったぐらいの高揚感があった。リアリティに欠けるというのはこの映画を批判する言葉ではなく、この映画への賛辞と受け取られるべきだ。
 
 
 
おすすめ度:ネタバレを避けながら映画館までたどり着くべき