だから結局

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【映画の感想】『アナと雪の女王2』

アナと雪の女王2』を見た。ミュージカルアニメとしてのジャンルを極めたような映画だった。数曲のMVを繋げて一本道を作ったような展開で、ストーリー好きは退屈しそうな話だったが、アナ派の自分にとってはアナが活躍しているだけで嬉しく、面白かった。
ばかばかしいと頭で思いながらもわくわくしてしまうのは威力あるなと思う。ディズニーランドもくだらないと思っていたけど行ってみたら行ってみたでものすごいテンションが上がったし、クリスマスももういい加減飽きたと思いながら、年の瀬ということもあって、やっぱりそわそわしてしまう。
アナと雪の女王2』も頭では気に入らないという悪感情がある一方で、子供だましみたいな喪失場面にはやっぱり涙が浮かびそうになってしまう。しょうもないとどれだけ思っていても、こんなのは絵空事だとどれだけはっきりわかっていても、アナが喜びのあまり嬉し涙を目にいっぱいためているのを見たら良かったなあと思うし、そう思わさせられるのは威力だと思う。
あと、ディズニー映画はそのストーリーテリングがいよいよ神話めいてきていると感じた。信仰を集めるに足る方法について熟知しているからこそMVを繋げたような映画にしているのだろう。これがディズニー製作でなかったなら完成度が低いの一言で終わらせられるが、他ならぬディズニーがやるとそれはもう計算ずくということになる。
迂闊なことを言わない、登場人物が登場人物のキャラクターを裏切らない、それでいて未知の旅に出ようと誘いかける。主張と行為が一致しないが、それを大いなる矛盾と呼ばせられるだけの技術があり、愛という言葉に満足できない観客にも「でも、倒錯的でしょ?」と語りかける。
自分はこんなのに入れあげたり、本気になったりしないが、それでもくだらないと否定することはできない。ファナティックにはなれないが、かといって心がそよとも動かないわけでもない。遠くにあるきれいな景色を見るように見ていられる。
しかし、そういう距離をとった見方にもアナ雪2は「対応」していると感じられて、その余裕ぶりに対して余計に気に入らなさを強めつつ、それでもアナはやっぱりかわいいから、結果、面白かったと満足してしまう。
こうやってぐだぐだと映画に文句を言うのもただクリストフに嫉妬して管を巻いているだけなのかもしれない。映画の登場人物の恋人に嫉妬するなどと自分でもばかばかしいことを言っているなと思うが、それだけアナはかわいいわけで、これはもう威力だと思う。アナは自分が相手のことを大切に思う気持ちについては1ミリの疑念も挟まないのにもかかわらず、相手が自分のことを大切に思う気持ちをうまく理解できなったり、それで心配になったり、相手の言葉をまったくあべこべに悪いほうに捉えたりしてしまうのは阿呆だと思う。阿呆だと思うが、それで減るわけではない。むしろそれによって増しているといえる。倍増しているとさえいえるかもしれない。何が、といって威力が。
 
TROPICAL LOVE

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  • アーティスト:電気グルーヴ
  • 出版社/メーカー: KRE
  • 発売日: 2017/03/01
  • メディア: CD