だから結局

So After All

書評

ピンチョン全小説を読んだ感想

映画の感想を書くときにとくに注意しなければならないのは、結末に関わる重大な出来事を映画未見の読者に知らせないようにすることだ。そういった配慮を欠く文章は映画ファンからは評判が悪い。それも単に悪口の対象となるだけでなく、深刻な倫理観の欠如と…

【本のおすすめ】『息吹』テッド・チャン

最近出たビッグタイトルを読み逃していた。一度は目に入ったのに、なぜか後回しでいいかと考え、即読むということをしなかった。本当になんでなのかわからない。 「自分の愛するものから離れさせるなんて値打ちのあるものは、この世になんにもありゃしない。…

昔より今のほうがいいという幻想

本を読む人にとって、本を読むことによる一番の危険はなにか。 本を読むことでその人が何を得たいと望んでいるか、という個々人のちがいを超えて、昔より今のほうが良くなっているという思い込みをしてしまうというのがひとつある。 読んだ本の数が増えるの…

今年見た映画、読んだ本

今年見た映画がとても少なかった、今年読んだ本が全然なかった、ということをここ4年ぐらい毎年言い続けている。いやしかし今年はとくにひどい、10年に一度の怠惰さとインスピレーションのなさで、…というとほとんどボジョレーの売り文句だが、本当に毎年毎…

【本のおすすめ】『可愛い女』A・チェーホフ

一番好きな作家は? と質問されて、かなり難しい質問なのにもかかわらず自分がチェーホフと即答できるのは、彼の短編に『可愛い女』があるからだ。チェーホフの代表作は小説というより戯曲で、『かもめ』『ワーニャ伯父さん』『桜の園』『三人姉妹』のどれか…

【本の感想】『FACTFULNESS』ハンス・ロスリング

「真実とは皆さんが考えているようなAではなく実際にはBなのです」 FACT(事実)を伝えるというとき、その言葉を使う裏にはこの回路が走っている。 その回路を読み取る力があり、その事実を自分が持っていなかったことから発する羞恥心が働くと、いかに事実…

【本の紹介】『スローラーナー』トマス・ピンチョン

スロー・ラーナー (トマス・ピンチョン全小説) 作者: トマスピンチョン,Thomas Pynchon,佐藤良明 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2010/12/01 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 10回 この商品を含むブログ (14件) を見る 今後読む予定がない人のための…