だから結局

So After All

文学

ピンチョン全小説を読んだ感想

映画の感想を書くときにとくに注意しなければならないのは、結末に関わる重大な出来事を映画未見の読者に知らせないようにすることだ。そういった配慮を欠く文章は映画ファンからは評判が悪い。それも単に悪口の対象となるだけでなく、深刻な倫理観の欠如と…

「則天去私」について(文学フリマ東京@エ-32)

私小説作家は、何よりも「私」というものを大事にする。私は私小説作家ではないが、何よりも私を大事にするという点で、そこらの私小説作家に対し決して遅れを取るものではないと自負している。 昔、啓発広告か何かで、利己的でマナーの心に欠ける人間を啓蒙…

遊びについて

遊びについて 幼児の遊びが一線を越えると、幼児は自らの遊びに泣かされることになる。幼児は自ら泣かされることになる方向へ向かう。遊びの領域はその延長線上に危険な領域をもつ。危険な領域がない方向に遊びはない。どの場所にいてもより危険な方向に遊び…

「同人サークル素人文学」の立ち上げについて

2020年7月9日、同人サークル素人文学を立ち上げました。 概要・活動内容は以下です。 *** ■なにをするサークルか自分が書きたい小説の完成を各々が目指す ■活動方針や頻度生活の中で執筆に当てた時間を共有するscrapboxを使用 ■どんな人に来てほしいか小説を…

ツイートしようとしたら長くなりすぎた

映画『インヒアレント・ヴァイス』を見て衝撃を受けたのがきっかけで、ピンチョンの本を読むぞと思って少しずつ読み進めていった。『重力の虹』〜『逆光』のあたりでフィクション受容全般に重大な影響を被っているのが自覚されてきたんだけど、あまりにディ…

【本のおすすめ】『息吹』テッド・チャン

最近出たビッグタイトルを読み逃していた。一度は目に入ったのに、なぜか後回しでいいかと考え、即読むということをしなかった。本当になんでなのかわからない。 「自分の愛するものから離れさせるなんて値打ちのあるものは、この世になんにもありゃしない。…

カフカ/臆断/できること・できないこと

先日、カフカの小説を読み終わった。カフカは大学時代に『城』を残して読めるものはすべて読んだ気でいたから、『城』を読み終わったときにカフカを読み終わったと思った。しかし実際には『審判』も読んでおらず、書店で『審判』を探す準備をしているうちに…

昔より今のほうがいいという幻想

本を読む人にとって、本を読むことによる一番の危険はなにか。 本を読むことでその人が何を得たいと望んでいるか、という個々人のちがいを超えて、昔より今のほうが良くなっているという思い込みをしてしまうというのがひとつある。 読んだ本の数が増えるの…

今年見た映画、読んだ本

今年見た映画がとても少なかった、今年読んだ本が全然なかった、ということをここ4年ぐらい毎年言い続けている。いやしかし今年はとくにひどい、10年に一度の怠惰さとインスピレーションのなさで、…というとほとんどボジョレーの売り文句だが、本当に毎年毎…

【本のおすすめ】『可愛い女』A・チェーホフ

一番好きな作家は? と質問されて、かなり難しい質問なのにもかかわらず自分がチェーホフと即答できるのは、彼の短編に『可愛い女』があるからだ。チェーホフの代表作は小説というより戯曲で、『かもめ』『ワーニャ伯父さん』『桜の園』『三人姉妹』のどれか…

【本の紹介】『スローラーナー』トマス・ピンチョン

スロー・ラーナー (トマス・ピンチョン全小説) 作者: トマスピンチョン,Thomas Pynchon,佐藤良明 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2010/12/01 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 10回 この商品を含むブログ (14件) を見る 今後読む予定がない人のための…