読書
映画の感想を書くときにとくに注意しなければならないのは、結末に関わる重大な出来事を映画未見の読者に知らせないようにすることだ。そういった配慮を欠く文章は映画ファンからは評判が悪い。それも単に悪口の対象となるだけでなく、深刻な倫理観の欠如と…
私小説作家は、何よりも「私」というものを大事にする。私は私小説作家ではないが、何よりも私を大事にするという点で、そこらの私小説作家に対し決して遅れを取るものではないと自負している。 昔、啓発広告か何かで、利己的でマナーの心に欠ける人間を啓蒙…
偽名を使うのは、サイコパスの大きな特徴の一つ 『サイコパスの真実』原田隆之 友人からサイコパスといわれたことがある。たぶん冗談なのだと思うが、それがどんな笑いどころをもつ冗談なのかわからないので、そう言われたときの困惑はそれなりにあった。ま…
寺山修司のことが嫌いだが、それはこの言葉に代表される「話を聞いてくれる人に向かって、言わずもがなのことを言って先導しようとする姿勢」がムカつくからだ。書を持っている人は、基本的に読む人であり、人の話を聞く人だ。彼らに向かって呼びかけるのは…
映画『インヒアレント・ヴァイス』を見て衝撃を受けたのがきっかけで、ピンチョンの本を読むぞと思って少しずつ読み進めていった。『重力の虹』〜『逆光』のあたりでフィクション受容全般に重大な影響を被っているのが自覚されてきたんだけど、あまりにディ…
最近出たビッグタイトルを読み逃していた。一度は目に入ったのに、なぜか後回しでいいかと考え、即読むということをしなかった。本当になんでなのかわからない。 「自分の愛するものから離れさせるなんて値打ちのあるものは、この世になんにもありゃしない。…
先日、カフカの小説を読み終わった。カフカは大学時代に『城』を残して読めるものはすべて読んだ気でいたから、『城』を読み終わったときにカフカを読み終わったと思った。しかし実際には『審判』も読んでおらず、書店で『審判』を探す準備をしているうちに…